2017UTMB参戦記⑤シャンペ~シャモニー

Champex-Lac~Trient


北八ヶ岳かな?って思う、岩とドロの区間があった(^^;)


眼下に街明かりが見えた。

シャンペから次のエイドであるTrientトリエンまでも比較的長い区間。
距離16.5kmで、累積標高は895m、想定所要時間は3時間50分。
結果、この区間は6時間10分かかった。
シャンペで2時間程度休憩していたことを考えると、まあ想定通りだったのか。
トリエン到着は9/3 4時00分、トータルで予定から5時間44分遅れとなった。
随分と遅れてしまった。
けど、、トリエンは約140km地点、残り約30km!
なんとか完走が見えてきた。

Trient~Catogne

トリエンのエイドを出た後、Catogneカトーニョ峠を越えて、いよいよフランスに戻ることになる。
暗闇の中、峠を目指して登りに登った記憶。
上を見上げると、前を行く選手たちのライトが、随分と上の方まで連なって見えていた。

シャンペでの仮眠効果は大きく、身体は大分回復していた。
シャンペ以降、道中で抜かされた記憶は殆どない。まあ寝てる間に大分抜かされたけど(^^;)
登りをグイグイと突き進んでいく中、やはりここでも同じくらいのペースの選手が一人。
その人についていく、とても面白い。


9/3 5時55分ごろカトーニョ峠。
フランスに戻ってきた。

Catogne~Vallorcine

カトーニョ峠から下り。
下りでは集団を抜かす場面が何度かあったけど、抜けるまでに時間のかかることが多かった。
噂には聞いていたけど、道を譲らない選手が多いのかも。
ちなみに、抜かすとき、サンキューとかメルシー的なことを言って通過していたのだけれども、
たまに日本人選手の場合があって、その時はなんだか恥ずかしかった(笑)


9/3 6時54分、夜が明けてきた。


9/3 7時22分 UTMB最後のエイドVallorcineバローシンに到着。
トータルの予定より6時間16分遅れ。
トリエンからは良いペースで来ていた感覚だけども、遅れが増している、予定タイムがきつかったのかも。

既に辺りは明るくなっていた。
このエイドには誰も知り合いがいなくて寂しかった記憶。
皆、もう先に行ってしまったのだろう。
残りは約20km。
ここまで来てようやく完走出来るという気持ちになってきた。
が、やはりちょっと眠たかったので(どんだけ寝れば済むんだって(^^;))、テーブルに突っ伏して15分くらい寝た。

Vallorcine~La Flegere


バローシンのエイドを出発。
残り20km弱ということと、完走をほぼほぼ確信出来たこと、引き続き身体が動いてくれていることもあり、ようやくUTMBを楽しめていた。
ここから先は、ここまで頑張ってきたご褒美かな。
150km走ってきて、さらに20kmをご褒美と捉えるのはどうかとも思うけども、とにかく、この時はそんな気分で、口笛さえ刻んでいたと思う。

今回のUTMBは悪天候により、2か所、山頂を巻くようなコース変更がなされている。
そのうちの一か所がこの先の区間。
結局、それがどこだったのかは分からなかった(^^;)


相変わらず登りも調子良くて、全然息が切れない。
全く、身体とは不思議なもんだ。
そういえばこの辺りの山からハイカーさんも多く見かけるようになった。
そして、皆、好意的に道を譲り、応援してくれる。
声援に対して、「サンキュー」というのが良いのか、「メルシー」なのか、はたまた別の言葉なのか良く分からない(^^;)


途中から一人、ここでも同じようなペースの選手を見つける。
HOKAのニット帽を被った選手。
登りが良いペース。ストックは1本だけ。途中で1本折れたのかな?
グイグイ行く感じ、とても面白い。
気が付けば、目の前にゲレンデが広がっていた。
ゲレンデもきつい登り。
けど、その選手とペースを落とすことなく、けども決して息の上がるような無理はすることなく、上を目指して登って行った。



どうやらLa Flegereラフレジェールというウォーターステーションに到着した模様。
そういえば、エイドじゃない、ウォーターステーションやただのチェックポイントでも大概、なんかしらの食べ物があった記憶。
約162km地点、あとはシャモニーまでチェックポイントはなし!下るだけ!!残り8km弱!!
さくっとドリンクを補給してエイドを後にした。

La Flegere~Chamonix

La Flegereラフレジェールからは林道みたいな、おんたけウルトラトレイルみたいな下りが続いた。
膝が痛い。ストックを駆使して、誤魔化しながら下る。
周りの選手も下りで膝が痛そう。腿をさすりながら下っている。

途中からシングルトラックになった。
木々が多い茂るような下り。
絶え間なくハイカー、応援者からの声援が続く。
下りは長くて膝が痛かったけど、ウルトラトレイルラストの下りで、終わらないでほしいと思ったのはこれが初めてかも。
「バボ!バボ!」と多くの人が言ってくれる。
バボ?なんだ、赤ちゃん言葉か?なんて思っていたけど、途中からそれが、「ブラボー!」ってことに気づく。
あとは「ウェルダン!」って言ってくれたり。これは結局意味がわからなかった(笑)
ああ、帰ってきたんだ、帰ってこれたんだ・・・。


ふと、左手の視界が開ける。
そちらに目をやると、街並みが・・!
ああ、シャモニーか?あれはシャモニーか??


もう少し進むと、今度はもっと視界の開けた場所。
街並みと、、そのバックには、大きくて雄大なモンブランの姿・・!!!
クソ!クソッ!!最後の最後に晴れて、その姿をくっきり見せるなんて、憎すぎる演出だ、モンブラン。
いや、もしかしたらあれはモンブランじゃないかもしれない(笑)
とにかく雄大な山とシャモニーと思われる街並みがそこにあった。
この演出にはやられて泣いてしまった。
レースで感動して泣けるなんて、それだけで儲けもん、勝者だ。
上手く行き過ぎてフィニッシュを迎えるなんて、面白くないもんな、なんて負け惜しみ。

Chamonix!



そこからしばらく下って、ついに街に出た。
1km、2kmくらい走ると、ついに見覚えのある景色が広がってきた。


受付の時に通った川、いつでも濁っている川沿いの道を進む。
この時も相変わらず濁っていた。



声援が途絶えない。
前に、カップルの選手が目に入る、抜かそうと思えば抜かせる。
けど、もうここで1分、2分速くなって、順位が2つくらい良くなってなんの意味がある。
今のこの時間をゆっくり噛みしめるべく、走った。


角を曲がるといよいよフィニッシュゲートまで続く道となった。
沿道に立てられたスポンサーのついたてを「バンバン!」と応援者がたたく音が耳に響いて心地良い。
TDS、OCCのフィニッシュシーンでその音を聞いていて、自分も自分自身の時間にその音を聞きたいな、と思っていた。
今、この「バンバン」は自分のために奏でられている。


フィニッシュゲートが目の前に広がる。
特に一発芸とかやる余裕はなく、そのまま普通に、ストックを手にした両手を天に突き上げて、、
フィニッシュ!!
9/3 11時22分 予定から5時間30分ほど遅れ、40時間52分かかってようやくシャモニーに戻ってきた。
悔しい気持ちもあるけど、完走出来て本当に良かった。

続く(亀)