2014UTMF完走記⑤独占インタビュー

うさかめ選手 独占インタビュー


2014年UTMFにてTOPと僅か21時間8分差で惜しくも369位とはなりましたが、40時間17分39秒という素晴らしいタイムで完走した、大田区を代表するウルトラトレイルランナーのうさかめ選手に独占インタビューを行ってきました。

レースを終えて

~レース後の河口湖八木崎公園にて~
──うさかめ選手、またお会いましたね。UTMFお疲れ様でした。そして完走おめでとうございます。

ありがとうございます。

──レース後でお疲れのところとは思いますが、今回もインタビューさせて頂ければと思います。まずは2014年ウルトラトレイルデュマウントフジを終えて、今の率直な感想をお聞かせください。

はい。タイムを狙ってはいたのですが、今は本当にただただ完走できて良かったという気持ちです。
また、終わってしまったんだなという寂しい気持ちもあります。

完走率について


──今回、UTMFの完走率が59.7%と過去最低になったわけですが、なにがその要因になったと考えますか?

はい。やはり前半の関門の厳しさがあると思います。実際、僕の知人も関門に引っかかったと聞きました。
ある程度予想はしてましたが、僕も最初の関門「二十曲峠では関門40分前でした。
その原因の一つには杓子山での渋滞があります。そこで30分以上待った選手も多いようです。

──なるほど。それだけ渋滞していると寒さも酷かったのではないですか?

確かに気温は低かったようですが、登りで体温も上がり、僕は半袖にアームウォーマーで大丈夫でした。
しかし、この時既にお腹は冷えており、その後の胃の不調に繋がったのかもしれません。

──胃の不調ですか?

はい。山中湖きららを過ぎたあたりでしょうか。吐き気を伴う胃の不調が出始めたのです。
いつもはウルトラのレース後半で出るような不調。まさかこんな序盤に、という思いでした。
それによってペースも落ちました。

──その原因は「冷え」にあると?

はい。結局、過去の経験からも疲れと冷えが重なった時に胃の不調が出ていたように思えるので、この時も冷えたのが原因ではと思います。
そこで役に立ったのが腹巻きです。動いていると暑いのでミッドレイヤー等は着たくない、でもお腹は冷やしたくない。そんな時に有効と感じました。

──なるほど、私もお腹は弱い体質なのでそれは良いことを聞きました。

レース予想と結果について


──事前に作戦を練ってレース本番を迎えられたことと思いますが、実際に走ってみて違った部分はありますか?

はい。まず、先ほども話しに挙がりましたが、杓子山での渋滞による待機時間が予想よりも長かったことです。
あとは胃の不調によりジェルを食べることができなくなり、スタート時に持参したピットインリキッド5本ですら消費出来なかったこと。

──それは辛いですね。ジェルの代わりになにか食べたのですか?

そうですね。やはりエイドが充実していたので、各エイドで食べるようにはしていました。
それでもレース中は胃の調子が悪く、吐き気もあったので固形物はあまり食べることができなかったですね。
エイドで食べたものは塩バナナ、饅頭、ポテトチップス、水餃子、オレンジ、パン、味噌汁、コンソメスープ、吉田うどん、金太郎飴。
飲み物ではコーラをよく飲みました。コーラはペットボトルに補給すると炭酸で漏れるので、補給にはスポーツドリンクもしくは水を使用していました。
コーラについては炭酸抜きVer.を用意してくれているエイドもあり、有り難かったのですが、結局それでも漏れてしまいました。
あとは確か西富士中学校の手前だったかと思うのですが、ロードで私設エイドをしているお姉さんがいて、その方が配っている漬物が美味しかったです。

──私設エイドは嬉しいですよね。それでエイド間でお腹がすくことはありませんでしたか?

はい。やはりエイド間が長くなってくると、お腹がすくことがありました。
本編にも書き着ましたが、天子ヶ岳では空腹のせいか幻臭を体験しました。
そういった時でもジェルは食べる気になれず、ただただ元気がなくなっていく感じでした。

──繋ぎのジェルが食べられないとなると辛いですね。

はい。あとは思ったよりもレース中は寒くなかったということです。
UTMFの為に悩んで購入したミッドレイヤーのキャプリーン4は全く使いませんでした。
あと、手袋もミッドレイヤーとアウターミトン、保温用のタイツを用意していたのですが、これらも使用しませんでした。
こればかりはレース当日になってみないと分からないのかもしれませんが、今回は動いている分にはほぼ半袖で走れる感じでした。
逆に先ほども言いましたが、お腹の冷えはもっと注意すべきでした。
今回は、他のブログなどを参考に腹巻きを持って行きましたが、次回はそれにカイロ持っていくこと、それに胃薬を多めに持っていくこと、その辺りに注意したいですね。

──レース展開としてはどうでしたか?

はい。予想では104kmの西富士中学校には20時間を切るタイムで入り、そこからずるずるとペースが落ちて結局ゴールは40時間を切るくらい、という予想でいました。
過去のウルトラレース、おんたけ、信越五岳、八ヶ岳では必ずと言っていいほどレース中に故障していたので、UTMFもそこはかなりの不安要素でした。
結果としては40時間17分と良くも悪くも予想と変わらないものとなりましたが、内容は全然違いました。
まずは仮眠を3回とったこと。
西富士中学校での仮眠は想定内でしたが、レース序盤、すばしりでの仮眠、それから本栖湖での仮眠は考えてませんでした。
レース一週間前から体調を崩し、日中は微熱とだるさ、そして寝ても寝ても眠い状態が続きました。
結局、それはレース当日になっても良くならず、仮眠を多く取る要因の一つになったと考えています。
しかしながら、もし体調が万全であったとしても、2日目の晩の眠気に勝てていたかは分かりません。
その為、レース中の休憩時間は予定より多くなりました。
しかし、休憩した分、天子山塊や本栖湖からの終盤は予想していたよりも元気よく走れました。
また、終盤30kmはランナーズハイのような状態になり、自分でもびっくりするくらい体が軽くなり、走りきれました。
大きな故障をしなかったことも予想外でした。
予想外の休憩、予想外の復活によりトータルとしては予想と変わらなかった、そんな結果となりました。

──私もうさかめ選手をラーンナーズアップデートでずっと見守っていたのですが、本栖湖からの追い上げにはびっくりしました。この復活の要因はなんだと考えますか?

それはありがとうございます。
復活の要因としては、一つはカップ麺、もう一つはホカオネ、あとは仮眠でしょうか。
カップ麺については本栖湖で250円で売られていたものです。
それまで胃の調子が悪くジェルも受付なかったのですが、無性にラーメンが食べたくなり、いざ食べてみるととてつもなく上手い。胃が喜んでいる感じです。
胃が元気になると体も元気になる、そんな感じでした。やはり、ジェルは「繋ぎ」であって、基本はちゃんとした食べ物を食べるのがいいと思います。
ホカオネについてはまだ完全には信用しているわけではないのですが、やはり衝撃が少ないことによって足へのダメージが少なくなり、後半でも走れたのではと思っています。
これが他のシューズだったらどうなっていたか気になるところですが。
しかしホカオネは下りで指先が当たってしまい、今回は指が酷いことになってしまいました。この辺り、改善していきたいです。
最後に仮眠ですが、これは眠気を取るためであって体の回復とは違う気もします。
眠気を取るのであればカフェインジェルとかでもいいのかもしれません。
今回はジェルを食べると気持ち悪くなった為、カフェインジェルを食べることができませんでした。
なので次回はカフェイン入りの栄養ドリンクなどを持っていくと良いかもしれません。

練習について


──UTMFに向けて行ってきた練習について教えて頂けますか?

はい。まず、練習する前に足を故障していたので、それを治すことを考えました。
そこでランナーの間では有名な皇居近くにある、とある整骨院に通うことにしました。
しかしながらいくつかの理由により2月ごろから通わなくなりました。
そこからは以前通っていた院へも通わなくなり、治療費の分、良いものを食べて栄養をつけるようにしました。
それでもマッサージやストレッチは効果があると考えていたので、セルフで続けました。
整骨院には長く通っていたので、故障の原因や対処法についてはなんとなく理解していたため、そういった知識を活かしてセルフ治療を続けました。
仕事柄、日中は座っていることが多く、それにより足の血行が悪くなり、足の緊張がほぐれないことによって故障が長引いていると考えました。
整骨院での治療は効果は少なからずあるとは思いますが、それは一日の一部であって、結局は大半を過ごす職場での過ごし方を見直さなければと思いました。
そこで、できるだけ仕事の合間でストレッチをしたり、筋トレをしました。
筋トレはスクワット、シンスプリント対策のパタパタ運動などです。
家では腹筋、バランスディスクを利用した体操などで体幹を意識したトレーニングも行いました。
しかし、これらのトレーニングは面白くなく、モチベーションが高くないと続きません。

──わかります、わかります。私もビリーズブートキャンプでダイエットを試みたことがあるのですが、結局1週間後にはゴミとなっていました・・。

そうなんです。僕も毎日やろうとはしてましたが、たまにやらない日もありました。
あと練習としては、故障はしていたものの、全く走れないということではなかったので、週末には積極的に山に行くようにしました。
2014年に入ってからUTMFまでは合計で15回山に行きました。
平均すると週に一回は山に行っている計算になります。
やはり山は楽しく、特に練習しているという意識もなく、ただストレス発散とか楽しむ為に行っていました。
真冬の時期には三浦アルプス・鎌倉アルプスに良く行きました。
あそこは冬でもそこまで寒くなく、アクセスも良いので冬場のトレラン練習にはもってこいでした。

──私も何度か三浦半島には行ったことがあるのですが、迷子になってしまい苦労した記憶があります。山に行った際の走行距離はロングを意識したものでしたか?

そうなんですよね。あそこは住宅とトレイルを出たり入ったりするため、コースがとても難解で初めは僕も良く迷いました。
山での走行距離についてはやはり100マイルを走る以上、ロングをやりたいという思いはありました。
しかしながら足の不調、1月2月の大雪などで、なかなかロングができず不安な日々でした。
長いのでは三浦半島縦断レースのコースを往復して77km。港南台から大楠山、そこから中華街まで走って55km。
レース2週間前に青梅、高水、御岳、武蔵五日で42km。
参戦が決まってから山で40kmを超えたのはこれくらいです。あとは大体20km~30km。
距離は短くとも連日走る意識は持ってました。疲れた状態で走る練習です。25km走った次の日に34kmなど。本当にやってる人は50km&50kmとかなんですが・・。

3月になって少しずつ暖かくなってくると、筋肉の緊張も少しほぐれたのか、ガソク炎も良くなってきて、少しずつ長い距離を走れるようになりました。
それからは帰宅ランを積極的に行いました。距離は10km~20kmです。
帰宅ランといってもかなりのスローペースで、早歩き、もしくはウォーキングの場合も有ります。
これはゆっくりでも重たい荷物を背負って長く進む練習という考えでやりました。
あと、ウォーキングには足の血行を良くする効果があるみたいで、故障改善にも期待していました。
そんなこともあって3月には人生で初めて月間走行距離が314kmと300kmを超えました。
走ってる人からすれば300kmなんて大したことはないのでしょうが、ロードを長く走るというのはどうも苦手でこれまで300kmを超えたことがなかったのです。

──平日は基礎トレーニング、帰宅ラン。そして週末は山といったところですね。他に意識していたことはありますか?

はい。なんといいますか、日ごろ生活していて嫌なことって沢山あると思うんです。
小さいことから大きいことまで。
それら全ての負のエネルギーを溜め込んで、それをプラスに変えてUTMFを完走してやるんだという意識はありました。
例えば満員電車。都内の人間は冷たいとはよく言ったもので、満員電車ではわざと肘で体を押してきたり、舌打ちをしてくる人など、様々な嫌な事が起きます。
しかし、体を押されたときにはマッサージされていると思うようにしたりしました。
あと、道を歩いている時、道を譲らない人って多いんです。ポーカーフェイスのまま過ぎ行く人。偉そうにわが道顔で歩く人。
そういった時には自ら進んで道を譲るようにしました。結果、余分に歩くことになるんです。
一人につき2メートル、一日に20回は遭遇すると仮定し、一日40メートル、一ヶ月で1.2km。
人に道を譲るということは多少なりとも不規則な運動になり、トレーニングになると思いました。
ロードと違い山では様々な障害物があり、不規則な動きになることもしばしば。
それを日常からトレーニングできるチャンスをくれた「心無い人たち」には感謝しています。
何事においても譲る気持ちって大事だと思います。それくらい心に余裕を持たせて行動したいですね。
俺は譲って強くなり、譲らずに楽したものは一生成長できないっ・・・・・!!てね。

──・・・なんというか考え方が偏っていますね。うさかめ選手、友達少ないでしょう?心配です。少し話がダークになってきたので、話題を変えましょう。それでは今後について教えていただけますか?

そうですか、もう少し続けても良かったのですが・・・。残念です。
あ、すみません、そういえば帰りのバスのチケットを購入しないといけないのでした。
ちょっと一回ここで中断してもらってもいいですか?
すぐに戻ってきます。

──あ、はい。大丈夫ですよ。こちらこそ長い間すみません。

今後について

(しばらくしてうさかめ選手が戻ってきてインタビュー再開。)
すみませんでした。オフィシャルのバスツアーを購入してきまして。しかし片道3000円とは足元みてますね。
あ、それで、今後についてでしたっけ。
まず休日明けに「上州武尊スカイビュー ウルトラトレイル《山田昇メモリアル杯》」通称YNMCのエントリーが始まるので、とりあえず当面はここを目標に頑張ろうと思います。

──YNMCですか?初めて聞く大会ですね。どういった大会なのでしょうか?

はい。私も最近知りました。
鏑木毅さんプロデュースで今年が第一回大会らしく、距離は約120km。注目すべきは獲得標高が8000メートル超えであること。
UTMFは169kmで9400メートルでしたから、UTMFよりも距離は短いとはいえ、アップダウンのきつい大会といえます。
またこの距離に対する獲得標高のきつさは国内随一だそうです。
制限時間は現在調整中とのことですが、暫定で34時間。気を抜くと完走が危うい感じがします。
しかし、UTMFとは違い、途中のエイドからストックが使えるため、その点はストック好きとしては嬉しいです。
登りは得意なので、下りの技術を今後鍛えていく必要がありそうです。
他には2週間後にチーム制のトレイルラン大会「名栗U字連山トレイル・チームチャレンジ記録会2014」、
5月末に富士山麓ロゲイニング、6月頭に伊豆大島トライアスロン、7月にはおんたけウルトラ100km、そして9月にYNMCです。
今のところはこれだけですが、6月~7月でショート~ミドルのトレラン大会があれば上位を狙うべく、参戦も考えています。

──なるほど、UTMFを完走した後も気持ちは変わらずトレランメインということですね。

はい。ウルトラトレイルワールドツアー(UTWT)というものがあるので、いつかはUTMFの別のウルトラトレイルにも参戦してみたいです。

──今後の活躍に期待しております。インタビューは以上になります。本日はUTMF完走後でお疲れのところ、長い時間頂き、本当にありがとうございました。